じゃらん・楽天トラベル・Booking.comの裏で動いていること
1. 電話と台帳の時代から始まった、宿泊予約の歴史
今でこそ、スマホで「じゃらん」や「楽天トラベル」を開けば、
数百件の宿泊施設の空室状況や料金を一瞬で比較できる時代になりました。
でも、ほんの20年ほど前まではまったく違いました。
当時はまず、ガイドブックや旅行代理店のパンフレットを手に取るところから始まります。
気になる宿を見つけたら、電話をかけてこう尋ねるのです。
「◯月◯日の空きはありますか?」
スタッフは紙の予約台帳をめくりながら在庫を確認し、
「あと一部屋空いています」と答えたら、口頭で仮予約を入れてもらう。
申込書はFAXで送るか、郵送で届く。
キャンセル連絡も電話のみ。
在庫はすべて紙で管理されていたため、
別のスタッフが同じ部屋を同時に売ってしまう“ダブルブッキング”なんてことも珍しい話ではありません。
つまり、当時は予約も在庫管理も完全に“人の手”によって行われていたのです。
2. デジタル化が変えた「予約の当たり前」
そんなアナログな時代を大きく変えたのが、予約エンジンとOTA、
そしてPMS(プロパティ・マネジメント・システム)などの管理システムです。
まず登場したのが予約エンジン。
施設の公式サイトから直接オンライン予約ができるようになり、
利用者は空室カレンダーを見ながら宿泊プランを選び、
そのまま決済まで完了できるようになりました。
これにより、「宿に電話して聞く」必要はなくなったのです。
続いて普及したのが、
「じゃらん」「楽天トラベル」「Booking.com」などのOTA(Online Travel Agency)。
複数の施設を横断的に検索し、料金・プラン・口コミまで一括で比較できるようになりました。
これまで“情報を探すこと”にかかっていた労力が劇的に減り、
「宿を選ぶ楽しさ」そのものが一気に広がったのです。
さらに、複数のOTAと公式サイトをまとめて管理するために、
サイトコントローラーという在庫同期システムが登場。
一つのOTAで部屋が予約されると、他のOTAや公式サイトの在庫も自動で更新されるようになり、
かつて頻発していたダブルブッキングの問題は一気に減少しました。
そして、予約情報や顧客データを一元的に管理するPMS(Property Management System)の進化。
部屋ごとの予約状況、宿泊履歴、売上・稼働率までをリアルタイムで把握できるようになり、
施設のオペレーションは飛躍的に効率化しました。
3. OTAと公式サイト、それぞれの「舞台裏」
便利なOTAですが、宿泊施設にとっては諸刃の剣です。
確かに新規顧客を獲得しやすくなりますが、
OTA経由で予約が入るたびに宿泊料金の10〜20%が手数料として差し引かれます。
宿泊料金が4万円なら、施設が受け取るのは32,000円ほど。
一方、公式サイトから予約してもらえば手数料はゼロです。
さらに、宿泊者のメールアドレスや宿泊履歴など顧客情報を直接取得できるのも大きなメリット。
こうした理由から、近年は「公式サイトから予約するとお得です」という
割引や特典を打ち出す施設が急増しています。
OTA経由:40,000円 → 手数料▲8,000円 → 実収32,000円
公式予約:40,000円 → 手数料0円 → 実収40,000円
4. まとめ:予約はこうして進化してきた
かつては電話と台帳でやりとりし、FAXで申込書を送っていた宿泊予約。
いまやスマホ一つで数クリック、わずか数秒で予約が完了します。
裏側では、OTA・予約エンジン・サイトコントローラー・PMSといったシステムが
複雑に連携し、情報をリアルタイムで同期しています。
この仕組みを知ると、
「どこから予約するとお得か」
「施設はどんな戦略でお客さんとつながろうとしているか」
といった視点が見えてくるはずです。
宿泊予約はシンプルになったけれど、その裏側はむしろ高度になっている。
運営側は全てのシステムを導入する必要はありません。
自分たちの予算規模やブランディングに合わせて、
それぞれのフェーズの要不要を見極めて選択することが大切。
ユーザーサイドとしては、便利だからといって大衆的なサービスを漁っていても、
掘り出し物を見つけることはなかなかできないのかもしれません。