なんでかと言うと、言語化しなくてもできるでしょっていう、すごく当たり前の作業の手順だから。
あった方が導入は楽になる、絶対。でも当たり前のことすぎて、そこにお金をかけるのは違うかなと思う──
これは、多くのオーナーや現場責任者が抱く正直な感覚だと思います。
しかし今、その「めんどくさい」を理由に後回しにする余裕がなくなりつつあります。
なぜなら、採用環境がここ数年で一変してしまったからです。
採用単価の現実
飲食業界におけるアルバイト採用単価は一人あたり約67,000円。
応募を集め、面接し、採用して現場に送り出すまでにこれだけのコストがかかります。
それでも、せっかく採用した新人が「教わる前に辞めてしまう」ケースは後を絶ちません。
新人教育が機能しないまま離職すれば、7万円どころか、その後の欠員対応コスト、再募集費、既存スタッフの疲弊など、雪だるま式に損失が膨らみます。
これはまさに「離職率の地獄化」と呼べる状態です。
現場が回らなくなる原因は、単純に人手不足だけではありません。
新人が入っても、教える人が忙しすぎて時間が取れない。教えられたとしても属人的で一貫性がない。
この「最初の教育の穴」が、現場のパフォーマンス低下と離職を加速させています。
本来、マニュアルはこの穴を埋めるための道具です。
特に、当たり前すぎて口で説明するのも面倒な手順やルールは、マニュアルに落とし込めばほぼ自動化できます。
これは、教える側の負担軽減だけでなく、新人の不安を取り除くという点でも非常に大きな効果を持ちます。
「めんどくさい」を超えるメリット
仮に新人教育の最初の3日間をマニュアルで半自動化できたとしましょう。
教える時間が1人あたり5時間短縮できれば、時給1,200円のスタッフ教育に換算しても6,000円のコスト削減。
1カ月で3人採用すれば18,000円、年間に直せば20万円以上が浮く計算です。
しかもこれは教育時間の削減分だけで、離職抑制による再採用コスト削減を含めれば、効果はさらに大きくなります。
結局のところ、マニュアルは「作るコスト」よりも「作らないコスト」の方がはるかに高い。
今の求人市場を考えれば、マニュアル作成は経費削減どころか現場存続のための必須投資と言えます。
私たちのクライアントも、ここ最近は常に「人問題」を抱えています。
一昔前の比ではない、大変な危機的状態がコロナ以降、5年以上続いているのです。
求人や紹介にいくらお金をかけても、思っていたリターンは返ってきてくれません。
入ってきてくれた人財に、どれだけ伸び伸びと楽しそうに仕事をしてもらえるか。
このことを真剣に考え抜き、行動できた店にだけ、勝利の女神は微笑んでくれるのかもしれません。