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【25/5/26掲載】「数字で動ける店」は強い。エモとロジカルを使いこなせ

できる店主は「感覚で動き、数字で確認する」バランス感覚を持っています。

料理や接客は「エモーショナル(=人の心を動かす)な仕事」ですが、
経営は「ロジカル(=構造を整える)な仕事」です。
元々、”好き”という気持ちから入ることの多いこの世界、どうしてもエモの部分に偏りがちなようです。
スタート地点で大切なのは、数字を避けないこと。

経営に必要な数字は、複雑な会計ソフトや難しい分析ではありません。


まずは、自分のお店をシンプルな数字でとらえることから始まります。
席数、営業時間、営業日数、そして1時間あたりの売上や人員数。

この数字の裏には、店主自身の働き方や、現場のクセ、ムダがすべて現れています。


現場の空気をよく知っているあなただからこそできる「数字の使い方」があります。

今回は、感覚と数字の間をつなぐ“経営のセンス”を育てるためのヒントをお届けします。

 


1. 経営とは、感覚とロジックの“通訳者”になること

飲食店の現場には、たくさんの「感覚的な判断」が存在します。
盛りつけの見栄え、料理の火入れ、接客の間合い、空気感のつくり方——。

それらはすべて、お客さまの感情を動かすための大切なセンスです。


一方、経営にはもうひとつ別の言語があります。

売上、利益、FLコスト、人時売上高。感覚では伝わらない部分を、
“数字”という言葉でとらえる必要があるのです。

数字だけで考えすぎると、現場が冷たくなる。

感覚だけで走り続けると、いつか体力がもたなくなる。

だからこそ、オーナーや店主はその両方の“通訳者”になる必要があります。
エモーショナルなサービスを提供しながら、ロジカルに判断できる状態。
それが「続けられる飲食店」をつくる土台になります。

 


2. 自分の店を「数字で見る」トレーニング

経営の数字は、難しい損益計算書から始める必要はありません。

まず見るべきは、「お店の持っている時間と空間」です。


たとえば、次のような数字を出してみましょう。

  • 席数:何席あるか?
  • 営業時間:1日あたり何時間営業しているか?
  • 営業日数:月に何日営業しているか?
  • 1席×1時間あたりに売上はいくら立っているか?
  • 平日・週末で、時間帯別の売上はどうか?

 

この時点で、「あれ?満席でもこの売上ってことは、単価が低すぎるかも」

「この時間帯、人を入れてる割に売上が出てないな」など、見えてくることが必ずあります。

数字に強くなるとは、「現場を数字でとらえる習慣」を身につけること

数字は結果ではなく、現場の動きそのものです。
この視点が身につくと、「何に時間を使い」「どこに手をかけすぎているか」が、すっと見えてきます。

 


3. 一皿の裏にある“時間原価”を見直す

「この料理、原価は30%以内だから大丈夫」


そう思っていても、実は利益を圧迫している原因になっていることがあります。


理由は、材料費だけで原価を考えてしまっているからです。
料理の価格には、食材費だけでなく“人の手と時間”がかかっています。


たとえば、前菜の盛り合わせ。
3種類の仕込み、冷蔵保存、皿に盛る手間。見た目も良く、人気があるメニューです。


けれど、提供までにスタッフが10分以上かかっていたとしたら、それは本当に利益を生んでいる商品でしょうか?

一方で、5分で提供できるパスタが原価35%でも、回転と手数で利益が残ることもあります。

 

「どれだけ売れたか」ではなく、「売れて利益が残ったか」。

その判断のために、提供時間と人件費を意識する視点が欠かせません。

 


4. 忙しいのに儲からないのは「構造が間違っている」

ピークタイムに厨房が混乱している。
注文がたまる、料理が出ない、会計が詰まる。
でも、みんな必死で動いている

——そんな光景、覚えがありませんか?

忙しいのに利益が出ていないお店は、「仕組み」そのものに無理があることが多いのです。

 

たとえば、

  • 注文が複雑すぎて提供に時間がかかる
  • 調理と提供の動線がぶつかっている
  • 片付けや会計に時間がかかり回転が悪くなる

 

こういった詰まりを放置すると、働く側も疲れ、お客さまもストレスを感じ、利益はどんどん削られます。

大切なのは、「これは本当に今やる必要があるのか?」という問いをもつこと。

“やらなくていいこと”を決める勇気が、余裕と利益を生み出してくれます。

 


5. スタッフと“数字の共通言語”を持とう

現場のムダや改善点は、スタッフがいちばん気づいています。
でも、「それ、時間もったいないですね」とは言いづらいもの。

そんなとき、数字は共通言語としてとても役立ちます。

たとえば、「このメニューって提供に12分かかってるんだよね。昼の回転だとちょっと重いかも」
という話は、「12分」という数字があるだけで、説得力が変わります。


数字を使えば、責めることなく、仕組みの話ができます。
スタッフも「自分がムダになってる」ではなく「店全体で変えられるかも」と思えるのです。


また、数字を共有することでスタッフの意識も変わります。

「この時間にこの人数なら、どこに入るべきか」を自然に考えるようになります。

数字を見るのは店長や経営者だけの仕事ではありません。
現場で働く全員が「感覚+数字」で動けるようになると、お店全体が変わります。

 


6. 毎日の“なんとなく”を、数字でチェックしてみよう

経営の見直しは、特別なことをしなくても始められます。
まずは日々の動きの中にある“数字の手がかり”を拾い上げてみましょう。

以下のチェック項目は、現場の作業と経営数字の接点を見つけるためのものです。

すべてに正解はありません。気づきを得るための“見える化”として、ぜひ活用してみてください。

 

飲食店の数字感覚チェックリスト(例)
  1. ランチ前の仕込み時間は何分?
     誰が、何品を、何人で仕込みましたか?その作業に対して売上は見合っていますか?
  2. ピークタイムの提供時間は平均何分?
     注文から提供までの平均時間を、時間帯別に記録したことはありますか?
  3. お皿を洗う時間にどれぐらいかかっていますか?
     営業終了後の洗浄・片付けにかかっている時間は?回数と人員で最適化できそうですか?
  4. 1日あたり、1席から平均いくらの売上がありますか?
     席数と売上を割ってみると、空間効率が見えてきます。
  5. スタッフ1人あたりが1時間で生み出す売上はいくらですか?
     いわゆる“人時売上”の感覚が身につくと、シフトの組み方が変わります。
  6. 1品あたりにかかる「提供までの手数」は何ステップありますか?
     注文から完成までにどれくらいの工程があるか、無意識に増えていないか見直してみましょう。
  7. 「この時間、何してた?」と思う“空白時間”はありませんか?
     アイドルタイムや作業の切れ目に、手が止まっていた時間を思い出してみましょう。

 

このような項目を日々チェックすることで、現場の「なんとなく」が数字になって見えてきます。

判断の指針が生まれ、仕組みを変えるきっかけにもなります。
最初はざっくりでも大丈夫です。

書き出してみること、見返すこと、それ自体が経営のトレーニングになります。

 


まとめ:現場の勘に、数字という“地図”を持たせよう

飲食店経営に必要なのは、「エモーションか、ロジックか」という二者択一ではありません。
むしろ、感覚を持っている人ほど、その感覚を言語化し、数字で再現できる力があるべきです。

  • 忙しいけれど利益が出ない
  • 一皿にかける手間が裏目に出ている
  • スタッフと認識がズレてしまう


そんなときこそ、「数字で見てみる」ことが、新しい打ち手を生んでくれます。

数字は冷たいものではありません。
むしろ、店を守るための“判断の地図”です。

店主自身の手の感覚、目の感覚、空気を読む感覚——


それらに、数字の地図を重ね合わせることで、感覚がさらに深まり、確信を持って店を前に進められるようになります。

経営の力とは、勘を裏切らず、数字で育てる力なのかもしれません。

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